34°42’12”N 135°29’41”E
落書きはまるで生き物のようだ。彼らは街中に突然に現れ、独自の生態系を作っては、寿命が来たかのように消えてなくなってしまう。そしてまた、どこからともなく彼らはやってくるのである。
かつてここ梅田一帯は、大阪湾に流れ込む河川の三角州と湾内の海流や湾の埋め立てによる低湿地帯で、鳥や水生生物が生息する自然の生態系に触れられる場所であった。そんな場所はいつの間にか、都市開発とともにビルが現れ、たちまち自然は消えていった。ご存知だろうか、現在また新たに緑地化計画が進行しており、再び都市の中に自然という生態系が取り戻されようとしているというのである。落書き、そして、ここでいう自然というのは、循環的な生態系であるという点で類似する。だが、それは当然なことなのかもしれない。なぜならば、人間が生きている限り、我々の時代の流れに左右される気まぐれという循環に従って、いずれも人間の手によって生み出されたり消されたりするものであるからだ。私はそんな、一見繋がりがなさそうな「都市で生きる落書き」と「都市における自然」の生態系というのを結びつけてみようと試みた。世界中国は違えど、同様に経済の発展とともに都市化が世界中で広まり、世界中に人工的な都市なるものが生み出され、その結果として改めて、我々は自然や環境と向き合わざるを得ない時代になってきた。そんな中、今作では、私自身がリサーチする中で関心の湧いた世界中の都市を選抜した。そこにおける落書きという生態系が入り口となり、私の作品がボンド的な存在として、都市と自然との関係性により多くの人々の目が開かれることを期待している。
- 素材:楠木、梱包箱、サウンド、QRコード
- 展覧会情報:2023年 / グランフロント大阪 うめきた広場サブスペース(大阪) / Study:大阪関西国際芸術祭 展示作品