個展「High Tide」
私は、都市や公共空間に潜む痕跡を題材に、木彫を使って美術表現をしている。その中でも特に惹かれてきたのが街に描かれた落書き、いわゆるグラフィティだ。グラフィティを引用して作品をつくることは決して簡単ではない。その難しさを受け入れたうえで、私はGoogleマップのストリートビューを通して、引用元となるグラフィティを探している。グラフィティは都市の隙を突いて生き延びるものであり、器物破損という違法行為である一方で、パブリックの一部として存在してしまっている。その矛盾を抱えながらも、多くのファンがいるのも事実だ。私もその一人だ。描かれたグラフィティには罪はない。それらはやがて儚く消えていく。その刹那的な存在に、私は都市の記憶としての痕跡を感じ、木彫作品として表現している。
個展「High Tide」は、私の作品「ランダムエンカウント」を通して、2021年〜台湾のグラフィティーライターの“大腸王”との出会いを作品を通して記録しています。2024年10月、大腸王がInstagramで投稿した内容がきっかけで、私は台湾の小さなネットワークの上で反発を受けました。しかし、その出来事は突然起きたものではありません。それは、公共空間における見えないルール、ストリートカルチャーにおける匿名性と権利の緊張関係、そして私自身の作品に内在する複雑なレイヤーによって形作られたものでした。
これらは、私が以前から取り組み続けてきたテーマであり、作品にとって極めて重要な要素です。だからこそ、私はこの一連の経験を作品に昇華するしかないと感じました。まさに今、このタイミングでそれを発表できる機会をいただけたこと、そしてこのプロセスの一環として大腸王と協働できたことに、心から感謝しています。
- 素材:楠木、クレート、二次元コード、インクジェットプリント、スチレンボード、ターポリン
- 展覧会情報:2025年 / Open Contemporary Art Center(台北) / 個展「 High Tide 」展示作品
- 撮影:葭村太一








